初心者が作る超初心者のための。。。
「江戸の染め付け・古伊万里」入門サイト
 ●見ても使っても ふんわり楽しい●

ドラえもんが青いから青い染付が好きというわけではありませんが。。。
古伊万里の簡単な歴史や器についての説明を添えながら、
お手頃骨董を中心にご紹介させていただきます。
漆継ぎ・金繕いオールドノリタケと西洋磁器@明治ポケマネ骨董のススメ

うんちくはヤボですが(笑)、 このサイトはタイトルの通り「興味があるのでひとつ手に入れてみたい」と思っていらっしゃる初心者愛好家の方々の参考としていただけましたら幸いと思っております。


2004 12 20 やっと出会えた「芙蓉手のお皿」を追加。
撮影機種
「FujiFilm DigitalCamera DS-7"CLIP-IT"」にて撮影の場合[DS-7]
「Canon DigitalCamera PowerShotG3」にて撮影の場合[G3]と表示。

蕎麦ちょこ 唐草  まずは猪口など  これは江戸後期の蕎麦猪口だそうです。 高台内「渦福」。 古伊万里で一般に「蕎麦猪口」と呼ばれている器の本来は「向付」です。 その中で写真のような「桶形」で口径が4〜8センチくらいまでのものを 慣例上「蕎麦猪口」と呼んでいるようです。 胴太のいわゆる蕎麦猪口形のものが誕生したのは、 蕎麦の食べ方が「付け蕎麦」として定着した18世紀中葉以降のことだそうです。 器の外側が画面となっている蕎麦猪口を含む向付群の面白さは、一度に絵柄のすべてを見られない ことではないでしょうか。必ず回しながら、絵柄を追って眺めなければなりません。 それも、右へ回すのと左へ回すのとでは、風景が異なります。これがなんとも楽しいですね。 蕎麦猪口や向付は意匠も数も豊富なので楽しめるのですが、ハマってしまったら大変かもしれません。(75×55)[G3]
菊唐草の向付 細部 菊唐草の向付  向付もいいです   この向付の細い輪郭線は型紙で描かれ、その上に濃彩してあります。 「型紙摺絵」は、紙に細かい文様や線・点を切り 上から呉須を点す方法で、いわゆる江戸小紋の流行の影響もあり、 元禄(1688-1703)以降に見られる技法だそうです。 三方の菊の文様が繋がるように流水のような唐草が描かれ、 なかなか粋です。高台内「大明年製」。18世紀前期。(90×52)[DS-7]

濁し手 向付けのシルエット  ところで「古伊万里」とは?  17世紀初頭に今の佐賀県で作られ始めた日本初の磁器であり、 江戸期全般に渡って有田周辺で生産された肥前磁器を呼ぶようです。 狭義としては「初期伊万里の後、寛永あたりから上手物の輸出が盛んだった享保まで」に限定されるそうです。 一般的には江戸期全般を通して幕末まで、 さらに広く明治の印判手までを古伊万里という呼称に含んでいるようです。 古伊万里を中心とした日本の磁器略史と江戸年号一覧
現在「古伊万里」と呼ばれている肥前磁器は、 その出荷港が伊万里港であったためにその当時から伊万里焼と総称されたそうです。 幕末頃には、江戸の後期に隆盛してきた瀬戸や美濃の磁器に市場を 取って代わられたそうで、そのために現代では磁器のことを「瀬戸物」と呼ぶそうです。 伊万里の隆盛と衰退はちょうど江戸時代の歴史に重なるように変化しており、 絵付けや高台の形にも「時代」が現れているのだそうです。

向付  使い勝手もよろし  向付として見慣れた大きさなのはこちらでしょうか。 小鉢と呼んでも良いかも知れません。古伊万里の図はデフォルメが多く楽しいのですが、 この器にも蔦か葡萄のような葉が一枚でんと大きく描かれ、その後ろには葦のような草が。 見込みに五弁花。江戸後期。(100×65)[DS-7]

向付 向付  形がきゅ〜と  レトルトのお惣菜でもおご馳走に見せてくれてしまいます(^^ゞ  右が表の模様、左が裏。この器のチャームポイントは、咲きかけの花のような器形と四つ角の切れ込み(隅切)ですね。 見込みに五弁花。江戸中期。(70×55)[G3]

なます皿 表 なます皿 斜め  すこし大きめのアイテム  蕎麦猪口(向付)に比肩する古伊万里の定番・膾皿です。 なますとは酢漬けのことで、酢に魚肉などを浸して 食べる習慣からできた深目の器です。現代でも煮物やスープなどに重宝な器です。 ものぐさなわたしの場合、「なます皿」の使用頻度が最も高く、いくつあっても嬉しい器です。 見込みは松竹梅。裏の唐草は細い線で稜線を描いてから中を濃彩する袋描き。蛇目高台。江戸中期。(148×55)[DS-7]
なます皿 なます皿
お気に入りの普段使い膾皿二点。ともに口縁に銹。左/江戸後期(155×50)、右/中期(150×45)。右の裏は袋描きの唐草。高台内「成化年製」。CanonPowerShotG3にて初の伊万里撮影(^^)。これら向付(猪口)や深皿(膾皿)は揃いで持つのもよいですが、1〜3枚ずつを柄違いで取り合わせても楽しいです。[二点とも G3]

豆皿 表 豆皿 裏  豆皿  こちらはその名のとおり十センチにも満たないお手塩(てしょ)皿です。 これら豆皿群は大きさに反比例するがごとく(^^;なかなかのお値段なのがミニ物愛好家には痛いところ。 表の文様はいわゆるこんにゃく印判による七宝繋ぎ文。裏は折れ松葉。かなり焼アマです。(94×74)[G3]

白磁 向付  形にホレる  なんの先入観もなく 「骨董屋さん」の敷居を跨いで、異世界に踏み込めた喜びに浸りながら、 一目惚れして買った「初めての骨董」が右の写真です。 濁し手(柿右衛門)と呼ばれる肌を持った白磁向付。(100×50)[DS-7]

平たいお皿には愛が沸かないわたしの好みの一番目には「形」があるようです。 この器の面影が始点であり帰結点となるのでしょうか。 透けるほど薄手で、形は柔らかく凛として、ちょうど良い端反りがあります。 口縁が切りっぱなしなことがちょっと気になりますが、 わたしにとってはツボを捉えたお気に入りです。 白磁 向付
あたかも夕顔の白花が咲いたよう。 青磁や白磁は陽刻にも深い魅力がありますが、 でもやっぱり白磁は形勝負で選びたいと思います。 これからどんなすてきな形に出会えるか今後のお楽しみです。

なます皿2 表 なます皿2 文様と焼き継ぎ  割れた器のお直し  これは「焼き継ぎ」が施された膾皿です。 ガラス継ぎともいって、割れた破片を合わせた継ぎ目に沿って釉の粉を置き、 熱で溶かして融合させる修復方法だそうです。江戸の頃には そういった職人さんがご用聞きをしながら街を歩いて仕事をしていたといいますから、 器たちはほんとうに大事に使われていたのだなぁと思います。 この方法ですと漆継ぎのような品格はないものの、継ぎ目が透明で違和感がありませんし、 釉と溶け合って同化してしまえば水につけて置いても大丈夫です。電子レンジもOK!(笑)  ところが、粉が溶けきっていないモノをはじめとして、 直し具合の良くないモノをしばしば見かけます。 これもそのうちの一つで破片同士が密着していませんでした。 ちょっと振動を与えましたら(^^;とれてしまったので、漆で付け直しました。
なます皿2 裏文様
この器の裏文様は「割り文」というそうです。江戸中期からある文様のようですが、 文化年間に多く見られるようになるそうです。 裏文様の特集などもおもしろそうですね。蛇目高台。(147×48)
お直ししました 漆で金継ぎ
右の写真は割れた器を漆でお直しした様子です。
漆で接着し(漆継ぎ)、欠けた部分にも漆を重ねて成形し、最後に金を蒔く「金繕い」です。 (「漆継ぎ・金繕い」を施した器をご紹介しています。)
以上の他に破片同士を「鎹(かすがい)」で継ぎ合わせる方法もあり、 骨董市などで時々見かけます。

くらわんか1  くらわんか  これも一目惚れの器「くらわんか」。 「飯くらわんか!」という乱暴な呼びかけから採られた名前だそうです。 18世紀中頃から19世紀の初頭にかけて、主に長崎県の波佐見で、 日常の器として生産され始めたものだそうです。 あっと言う間に全国へ広まり、北は松前藩まで運ばれたそうです。 胎は厚めで呉須の発色は全体にあまり良くありません。 けれどもほんわかしていて、写真のように 熟練のなせる伸びやかで味わいのある自由闊達な筆致が魅力です。 専門家の方々の間でも「くらわんか」の評価はまちまちのようですが、 存外に数が少ないようで、雑器と言ってあなどれません。(133×35)[DS-7]
くらわんか手 「くらわんか」の絵付けには 筆の勢いがそのままに見えるので、目に映る風景が日によって時間によって 気分によって変わる楽しさがあります。右のお皿はくらわんかではなく 「くらわんか手」と呼ばれるもので、絵付けや焼き上がりは良好です。 縁はゆるい輪花になっており、見込みはこんにゃく判の五弁花。 くらわんかのお皿には縁起物の扇文様がしばしば描かれ、 上のお皿にも扇の一部が省略されたデザインで描かれています。 右のお皿はきれいに作られている分、上のお皿のような味は薄れていますが、 かわいくって粋でしょう?高台内は渦福。(140×35)[G3]

五弁花 五弁花 五弁花  五弁花  見込みの真ん中に描かれた花の紋は五弁花というそうで、 江戸中期頃から流行した見込み文様だそうです。  写真は手描きのもの三種。 右のものがもっともよく見かける形だと思います。 左は18世紀前期のものと思われ、花びらがもう二重です。 中央のものはやや崩れた二重。 くらわんかではこんにゃく判で押されることが多いようです。

よく見るといろいろ描き込まれているお皿  キーワード「宝暦」  この六寸皿は、 宝暦年間(1761-1763)の様式を良く現しているそうです。 縁には菊花と窓の中に梅木が描かれ、見込みは栗。 菊の花と葉は唐草を交えながら大胆に文様化されています。
宝暦という時代は、それ以前の欧州向けおよび献上品が主体だった伊万里の生産が、 鎖国により国内向けに全面転換された時期だそうで、 庶民の器としての量産が行われるようになり、 技術の低下が如実になり始める時期だそうです。 もちろん、それ以前にもただ古いだけで美しくない物もあり、 またそれ以後にもすぐれた物はあるわけですから、 ここで一線を引いてしまうことは正しくないかも知れませんが、 時代背景的に、一つの転換時期と言えるようです。 (185×30)[DS-7]

龍が雲の中を飛んで行く〜っ 見込み文様  線描き  濃彩を使わずに、細い線描きのみで表現された飛龍の文です。 裏に火焔宝珠。薄手の胎で広東碗の形を汲んだ器形です。見込みは、 この飛龍が描かれたときのお決まりのひとつような文様ですが、 題材はいったい何なのでしょう? 龍にちなむものとして水から波文様と、 丸はいわゆる宝印でしょうか? 単なる水玉? 高台内に寿字?の銘。時代は幕末ころでしょうか? と、わからないことの多い器ですが、 でも、とにかく欲しかったオトボケな龍、これで飲んだ花梨湯はおいしかったです。(90×78)[G3]

なかなかかわいい  最盛期といわれています  この向付、 ぷにゅぷにゅとした唐草が可愛いです。藍柿右衛門と呼ばれる作品群のひとつだそうで、 元禄(1688-1703)さらには延宝(1673-1680)の頃と見てもよいとのことでした。 濃彩の濃淡が微妙かつ明解。裏文様も品良く丁寧に書き込まれて気持ちがよいです。

文様は、歳寒三友の松竹梅。口縁に銹。唐草と裏文様ともに袋描き。5客組♪(147×45)[DS-7]
藍柿右衛門

タコと竹。「古之人」銘。

丸文と高台 タナゴコロにぴったりな丸み  ワンナリ・丸文  碗の形をしているので「碗形(わんなり)」といわれる向付です。 たなごころにぴったりの半球のようなフォルムがあまりに可愛いので。 その丸みに合わせた文様なのでしょうか、 整然と等間隔に並べられた丸文の中に、立沢瀉・青海波・山水・麻の葉・分銅菱などの文様が、 可愛らしく繊細なタッチで丁寧に描き込まれています。縁の四方襷も線の数が多く手が込んでいます。 見込みに五弁花。高台内「大明成化年製」。これはお店の方になんにもお聞きせずに かわいい!のノリで手にしてしまいました。[DS-7]

芙蓉手 裏文様  芙蓉手  ずぅ〜っと欲しいと思っていながら、たまにぶらぶらと骨董市を歩く程度では なかなかお気に入りに出会えなかった芙蓉手のお皿でしたが、 これはまさに出会いの一品。藍と白地のバランスがとても気に入りました。 表の様子や裏文様、目跡などから寛文期(1661-1672)のものだそうです。 芙蓉手とは、蓮弁の窓を区切り、その中に文様を描く様式のことで、 明代に流行した絵柄を伊万里が踏襲したものです。特に西欧で好まれたそうです。 一日の終わりにこれを眺めると安らかな気持ちになります(笑)。[G3]

花唐草と四方襷  蓋物  たっぷりとした蓋付き碗です。 いわゆる花唐草が見せ所の器。口縁に金彩があります。 花唐草の繊細さに比べ、縁の内外に描かれた四方襷がやや豪快でアンバランスさも。 裏(裾)の枝垂れ桜も力強く大胆にデザインされています。全体に描きまくった印象ですが、 蓋をして、お膳を眺める高さで見ると、後絵かもしれませんが、色絵がポイントになっていて、締まっています。

DS-7という今となっては相当に性能の低いデジタルカメラにしては、 ピントが合ってよく撮れたように思いますので、少し大きなサイズでご覧いただけます(笑)。見込みに松竹梅。
枝垂れ桜の文様 橘の色絵
裏と高台の様子。花唐草と同じように三方に枝垂れ桜を配置。これも年代不明(^^;のまま。  右は蓋の上から。絵柄は橘。[DS-7]

端反がいい!  小さくても味わい大きく  端反が大好きなんです。 という趣味で手にしました。煎茶茶碗でしょうか。反り返った縁を持つ器は数的にはマイノリティであるらしく、 お気に入りに出会う機会はあまり多くありません。これはお気に入りの中のお気に入りで、 文様はやや固いのですが、しっくりと手に馴染み、胴のぷっくり感と縁のすっと切れた感じがよいです。 裏絵には雁に見えるような見えないような文様があります。高台内「大明年製」。[DS-7]

中期 藍九谷 裏文様の様子
 おしゃれ  五寸弱のお皿ですが、 デザインとバランスがとにかくお洒落です。中期の藍九谷と区分されるそうで、 寛文(1661-1672)からそれ以前と見ても良いとのことでした。 わずかに時を後にして現れる藍柿右衛門は、意匠の様式化と優美繊細を極めた一群と思われますが、 藍九谷は、呉須の色も強く、はっきりとした意匠性があるので、力強さを感じさせてくれます。 小振りで粋なので、これはさすがに棚に飾りたいです。  右は裏の様子です。文様はまだあまり描かれていません。目跡はひとつ。砂付き高台。[DS-7]
元禄です  逆蛸  上のお皿とほぼ同じ大きさの深皿です。元禄(1688-1703)の頃の作風だそうです。どこもかしこもかわいい!四寸五分。特に雪輪文様と三種類の唐草の調和がきれいです。見込みの蛸がいわゆる逆蛸唐草と呼ばれる文様です。銘は車福とよばれるそうです。目跡はひとつ。疵物でいいので五枚ほしかったんですが、買えませんでした(^^; うーん、雪輪の周りの、カラスノエンドウみたいな、くるくるっと巻いた唐草の加減が、たまらなくいいです。トコロテン入れたら怒られますかしら(笑)。[G3]

さて、入門編はここまでといたしましょう。お楽しみいただけましたでしょうか。
さらにご興味をお持ちになられた方は、次のリンクから古伊万里の深みにおはまりになって下さい♪


<染付・古伊万里のリンク>
古民芸・骨董 水馬(みずすまし)

古伊万里に魅せられて

早川花苑 骨董の館

骨董入門byたんどむ
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古伊万里は献上品や観賞に主眼を置いた輸出品から、 江戸後期から幕末に広まった庶民の日用品まで幅広く、味わいも様々ですね。 物の本質的な価値と市場価値とは必ずしも比例しないということを再認識しました。

子供の頃は「磁器」が好きで、「絵付けのはみ出し」や「形のゆがみ」といったものが嫌いでした。 美術に進み、「陶器」に触れる機会も増え、作家物を使うようになりました。 それから物を見る目がずいぶんと変化したように思います。 今は、観賞伊万里の「完璧な完成度の勝負」からはちょっと外れたところにある 身近な古伊万里を使いながら、小さい発見を楽しんでいます。 これからまた自分が変化していくことも楽しみたいと思います。

この頁を制作するにあたって10日間、本屋さんで立ち読み(笑)をしたりしながら、 おおざっぱな歴史や語句などを把握した程度で公開してしまいました。 説明文はおそるおそる書かせていただきました。 技法や年代など、お気づきのことがありましたら ぜひご指導いただきたいと思います。

一つの器を手にして、「きれい」とか「かわいい」と言いながら うきうきしている様子をご紹介することで、 新しく興味を持って下さる方がいらっしゃいましたら嬉しい限りです。
2001.8.29-2001.9.7 謹 (2001.11.6 再編)

ザッキーズ 和洋中華を問わずに食卓で毎日活躍する「ザッキーズ」のみなさん。 いわゆるくらわんか手の器達です。 薄作りの器と違いめったに割れません。
右上の小皿はちょっとおすましな染錦。
江戸後期〜末。

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